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それではクイズの1番から10番まで順に見ていきましょう。

 
宮本惠子です。科学英語クイズの答えを順に見ていきましょう。
第1問 鉛は328℃で融ける。正解はBのLead melts at a temperature of 328°C.です。温度という概念を表す抽象名詞のtemperatureに「a」がつくのはおかしい、と思われた方もいらっしゃるかもしれません。実は、科学英語の世界では抽象名詞が普通名詞になる場合があります。ここでtemperatureは温度という概念を示す抽象名詞ではなく328℃という一つの数値で表される温度を示している普通名詞なのです。一方、元素である鉛(lead)には冠詞はつきません。
 
第2問 ウィルスの増殖と単離が述べられている。正解はB。ここでは、増殖 Growth と単離 isolationという二つの抽象名詞(つまり不可算名詞)がandで結ばれて主語になっています。通常、抽象名詞は単数扱いですが、andで結ばれると複数主語となり、複数扱いになります。したがって、動詞はisではなくareになります。
 
第3問 銅は硫酸と反応する。銅copperは元素なので無冠詞ですが、硫酸sulfuric acidはどうでしょう?ここで硫酸というのはたくさん存在する酸の一種、化学式H2SO4で表される酸を表す名前です。固有名詞のようなものと考えてください。したがってaは必要ありません。
 
第4問 水酸化カリウム5gをその溶液に加えるという文で、5gの水酸化カリウムは単数でしょうか?複数でしょうか?正解はA。水酸化カリウムは物質なので、量に関係なく単数扱いです。ただし、単位は複数形になります。つまり5 gramではなく5 gramsとgramにはsがつくのです。
 
第5問 He is the researcher.という文で「the researcher」とはどんな研究者を指すのでしょうか?正解はC。日本では「the」に対して「世界で一番優れた、究極の」というようなイメージがあるようですが、それは間違いです。会話に出てきた「the researcher」とは今、そこで話題にでた研究者、を指すのです。その道の権威、世界中の人が知っている有名な研究者、と言われても、人によって解釈がわかれてしまうのではないでしょうか?世界にたった一人の存在と限定することができない場合に「the」は使えません。
 
第6問 andではなくorで結ばれた二つ(以上)の単語が主語になっているとき、動詞はorの後にくる単語に合わせます。ここではusesが複数なので、動詞はareになります。単語を入れ替えてUses or applicationとすると、文の意味は変わりませんが、動詞はisを使用することになります。
 
第7問 We need a green oxygen producing plant.私たちが必要なのは緑の植物です。この文はWe need a green plant producing oxygen. と言い換えることができます。producing をplantの前に持ってくると、目的語のoxygenが動詞producingの前に来て、「酸素生成」という意味の複合形容詞oxygen-producingとなるのです。同じような単語にLED=light emitting diode(発光ダイオード)があります。
 
第8問 eachという形容詞がついた名詞は複数の意味でありながら、単数の動詞を取ります。つまりeach test tubeというのは単数扱いですが、意味は複数本の試験管ということ。ではeach~ and  each~ とeachが重なった複数主語の場合、動詞はどうなるかというと、この場合も動詞は単数形になります。したがって正解はAです。ただし、each ~の後に allとかeveryなどが来ると動詞は複数形になります。
 
第9問 測定を行うときに用いる装置には冠詞は何をつければよいのでしょうか?装置は1台、2台、と数えることができる普通名詞なので、冠詞は必要です。世界に一台しかないような特別な装置の場合は定冠詞の the をつけますが、世界中に何百台、何千台と存在する(つまり、市販されている)測定装置の場合、不定冠詞の a をつけなくてはいけません。
 
第10問 Gasoline will float on waterとgasoline floats on water. 実はこれらの文の意味にほとんど差はありません。あえて違いを述べると
A は「ガソリンは水に浮くものだ」これはガソリンにはそういう性質がある、ということを伝えたい文。
B は「ガソリンは水に浮く」と事実を述べている文です。
「will」とあると自動的に「~だろう」と訳す。この文を「ガソリンは水に浮くだろう」と「推測」の意味に解釈するのは危険です。科学英語では「will」はほぼ確実に起こる未来の出来事を表すときに使われます。

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英語の冠詞って日本語の「てにをは」(助詞)に似ていると思うのです。あってもなくても意味は通じるようで、実は重要な役割を果たしています。

 
 
宮本惠子です。今日は冠詞の「a」と「the」の違いについて考えてみたいと思います。

さて、皆さんの目の前に今一人のマジシャンが立っています。白い卵を1つ私たちに見せながら彼は言います「ここに卵があります」。次に彼がそれを空中高く放り投げると、あれ?卵は消えてしまいました。両手を組み、しばらく考えているマジシャン。ふと右のそで口を私たちの方に向けると、そこには何か白いものがのぞいています。おもむろに取り出した卵を見せながら彼は言います「卵はここにありました」。

それではマジシャンのセリフを英語にしてみましょう。

最初のセリフ「ここに卵があります。」これは「Here is an egg.」ですね。なんの変哲も無いただの卵。初めて登場した卵なので不定冠詞の「an」がつきます。 

最後のセリフ「たまごはここにありました。」これは「Here is the egg.」このたまごは皆が知っている例の消えた卵です。だから定冠詞「the」がつくのです。


a と the の違いってこういうことなんですね。何の変哲も無いただの卵は不定冠詞の「an」。たくさんあるもののうちの一つ。ということ。一方、たった一つだけの特別な存在、これを特定されている、と言いますが、そういう名詞には定冠詞がつくのです。

では、最後に問題を解いてみてください。

道をあるいていると、人参が一本落ちていました。なんでこんなところに人参が落ちているの?と訝しがりながら、あなたが言う一言。

「Oh, here is (     ) carrot.」

市場から帰ると、買い物かごから人参が一本消えていました。帰り道のどこかで落としてしまったようです。探していると、ようやく見つかりました。ほっとしたあなたが言う一言。

「Oh, here is (     ) carrot.」


 
 
 
 

解答 最初の冠詞は「a」次の冠詞は「the」


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それでは冠詞についてさらに詳しく見ていきましょう。

 
宮本惠子です。オンライン授業3回目のきょうは冠詞についてさらに詳しく見ていきましょう。
 
英語には日本語にない「冠詞」というものが存在します。りんごと言いたい時、日本語では単に「りんご」と言えばいいのですが、英語ではan apple, the apple, apples, the applesの4通りが存在するのです。
ですから、英語を書いたり話したりするときには、この名詞にはどのような冠詞が必要であるか、ということを常に考えることが重要です。
 
一番最初に考えることは、それが特定されているかどうか。特定されている名詞には the がつきます。
 
ここで重要なことは the はあらゆる名詞につくことができる冠詞である、ということ。例えば、愛や平和、あるいは温度といった抽象概念をあらわす名詞、酸やアルカリ、砂糖、塩といった物質をあらわす名詞、そしてイスやテーブル、本などの目で見て、手で触れることができ、1つ2つと数えることのできる普通名詞のいずれにも the はつくのです。
 
それでは特定されているということはどういうことでしょうか?一言で言えば、書き手と読み手の双方が共通にイメージできることを言います。具体的には世界にただ一つしかない存在。例えば太陽や月。すでに一度話題に上っているので、誰もが何を指しているのかわかる存在。そして of で限定されている存在です。これについては後ほど解説します。
 
(特定されていない名詞の場合)冠詞が不要なのは、抽象名詞(目に見えず、手で触れることもできない、愛、平和、温度などの名詞)と物質名詞(目で見ることもでき、手で触れることもできるけれど、一つ二つと数え上げることができない、酸、アルカリ、牛乳、水などの名詞)です。
 
一方、普通名詞(目で見ることができ、手で触れることもでき、一つ二つと数え上げることができるビーカー、ピペット、机、鉛筆などの名詞)には不定冠詞の a または an がつきます。
 
of で限定された名詞にはなぜtheがつくのでしょう? 例えば分子の構造を分子構造(molecular structure)と言いますが、世の中にはたくさんの分子がそれぞれ独自の分子構造をもっているので、分子構造は多数存在します。ですから単に分子構造という場合は「a molecular structure」となります。でも水分子構造のように「of water」と of で限定されると、一つに特定されるので、the molecular structure of waterと、molecular structureには the がつくのです。
 
論文などで登場する、測定を行うときに用いる装置には冠詞は何をつければよいのでしょうか?装置は1台、2台、と数えることができる普通名詞なので、冠詞は必要です。世界に一台しかないような特別な装置の場合は定冠詞の the をつけますが、世界中に何百台、何千台と存在する(つまり、市販されている)測定装置の場合、不定冠詞の a をつけなくてはいけません。
 
fat(脂肪)についてさらに詳しく考えてみましょう。
 
「In nutrition, biology, and chemistry, fat usually means any ester of fatty acids, or a mixture of such compounds.」
 
これはWikipediaの冒頭です。栄養学、生物学、化学の分野で、脂肪とは通常脂肪酸のエステルやそのような化合物の混合物を指す、という意味ですが、ここで fat には冠詞がついていません。
 
それは脂肪という物質を意味しているから。水やミルク、砂糖や塩などの物質を表す名詞、これを物質名詞と呼びますが、このような物質名詞には普通「a」はつきません。ですからWe drink a waterではなく、We drink waterというわけですね。
 
ところが一口に脂肪と言ってもその中には善玉脂肪と悪玉脂肪という2種類の脂肪があります。
 
What is the difference between a good fat and a bad fat?
 
善玉脂肪と悪玉脂肪の違いは何?という上記の文では、不定冠詞の「a」が使われています。つまり、脂肪の中の種類に注目するとき、善玉脂肪や悪玉脂肪といった、一つ一つの脂肪は普通名詞になるのです。
 
確認問題 どちらの文が正しいですか?
 
A) Examples of unsaturated fats include vegetable oils such as canola.
B) Examples of unsaturated fat include vegetable oil such as canola.
 
英文の意味は「不飽和脂肪の例としてはキャノーラなどの植物油があげられる」です。
 
さて、キャノーラのような植物油とありますが、植物油にはキャノーラだけでなく、他にもゴマ油、アボガドオイルなど多数の種類があるので、oil は複数の oils になります。またそれらを含むのが不飽和脂肪なので、とうぜんこちらも複数の fats になります。したがって正しいのはA.
 
temperature(温度)には「a」がつくでしょうか?
 
A)  There is a proportional relationship between pressure and temperature.
B)  Lead melts at a temperature of 328°C.
 
Aの文は圧力と温度の間に比例関係がある、という意味。temperature は温度という概念を表す抽象名詞なので、無冠詞です。一方鉛は328℃で融けるという意味のBの文ではtemperature は温度という概念ではなく、328℃という一つの数値で表される温度を示しているため、普通名詞となり、a が必要になるのです。


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前置詞はアルファベット2文字(または3文字)からなる小さな単語ですが、前後の単語の関係を決めるという大きな働きをしています。ですから、細かなニュアンスまで英文を正確に読み取るためには前置詞に気を配ることが重要です。

 
宮本惠子です。オンライン授業4回目のきょうは前置詞を取り上げます。
前置詞はアルファベット2文字(または3文字)からなる小さな単語ですが、前後の単語の関係を決めるという大きな働きをしています。ですから、細かなニュアンスまで英文を正確に読み取るためには前置詞に気を配ることが重要です。
 
場所を示す前置詞として主な3つを取り上げます。
 
ここでは、in on atの順に領域が狭くなります。inは広がりをもったものの中に、onは面や線に接して、atは狭い領域にピンポイントで存在するときに使われます。それでは、三角形 ABCを例にとり、このどこかに点Pが存在する場合を考えてみましょう。
 
三角形 ABC上に点Pがあると言いたい時、Pがどこにあるかで前置詞が変わります。
 
まず三角形というある広がりをもつ領域の中にあるときには「in」を使い、Point P is in triangle ABCとなります。辺AB上にあるという場合、線に接しているのでPoint P’ is on side ABです。
 
さて頂点Cの上にあるという場合はピンポイントで場所を示しているので、Point P’’ is at vertex Cとなります。この場合は点C上にあるという意味でonを使うこともできます。
 
ちなみに高校までP’、P’’と習っていると思いますが、英語では P prime, P double primeとなることに注意してください。
 
時間の場合も in  on  at の順に範囲が狭まります。 inは季節(in Spring)や月(in April)に、onは曜日(on Monday)など、at はもっとピンポイントで時間を示し、 at 3 o’clockなどと使われます。
 
一方時間の長さを表す前置詞は for です。それではここで確認問題をやってみましょう。
 
溶液を35℃で4時間加熱しなさい。実験のマニュアルにこんな文がありました。さて、英語ではどう表現したらよいでしょう?
 
実験のマニュアルは料理のレシピと同様、~をしなさい、という命令形で書きます。溶液はsolutionなのでHeat the solution。
 
ここで冠詞がtheであることに注意してください。これを「a」にしてしまうと「どれでもよいので、ある一つの溶液を加熱しなさい」という意味になり、実験の手順としては意味不明。実験する人にはどの溶液かが明らかなのですから「the」でなくてはなりません。
 
次は「35℃」と「4時間」の前の前置詞ですが、35℃というピンポイントの1点を示しているのでここは「at」4時間という時間の長さを示す前置詞は「for」ということになります。
 
方向を示す前置詞は to です。日本語では助詞の「に」や「へ」がこれに相当します。to が場所を表す in や on と組み合わさると into や onto という新しい前置詞が生まれます。
 
When pressure is applied to a liquid, its volume decreases. 液体に圧力を加えると、その体積は減少する。という文では方向を示すto が使われますが、Water was poured into a beaker. 水をビーカーの中へ注いだ。という文ではビーカー「の中」を示す「in」と方向を示す「to」が組み合わさったintoが使われます。
 
最後に手段を示すのに用いられる前置詞について解説します。
 
byとwithは日本語の「~によって」に相当しますが、これらの違いを少し細かくみていくと、それを行った主体(人)あるいは手段(方法)を示すのが「by」で、それを行うのに用いた道具や物質を示すのが「with」になります。
 
それでは、沈殿(precipitate)を分離するのに、濾過(filtration)あるいは濾紙(filter paper)を使ったとする次の文の(  )に適切な前置詞を入れてみましょう。
 
filtrationは方法なので by が、filter paperは物質なので with が使われるのですね。
 
確認問題をやってみましょう。
 
英文の意味は「室温まで冷却した溶液を100 mLの酢酸エチルの中へ注ぎ入れ、得られた有機相を300mLの水で3回洗浄した」です。
 
溶液は室温「へ」と温度を下げていくので、方向を表す「to」が使われます。
 
次に酢酸エチル「の中へ」注ぎ込まれるので「into」そして最後は「水」が手段ではなく物質なので「with」となります。
 
いかがでしたか?ご感想やご質問は、コンタクトのページからお寄せください。
 
これでオンライン授業第4回を終わります。


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簡潔であることが好まれる科学英語の特徴は、あってもなくてもよい単語はできるだけ省略する、ということ。同じ内容が伝わるのであれば、できるだけ言葉の数は少ない方がよいのです。その結果、論文などでは関係代名詞はあまり使われていません。

 
宮本惠子です。オンライン授業5回目のきょうは動詞から作る形容詞を取り上げます。簡潔であることが好まれる科学英語の特徴は、あってもなくてもよい単語はできるだけ省略する、ということ。同じ内容が伝わるのであれば、できるだけ言葉の数は少ない方がよいのです。その結果、論文などでは関係代名詞はあまり使われていません。
 
次の二つの文を比較してみましょう。
Samples synthesized according to procedure 1 were used for this experiment.
Samples which were synthesized according to procedure 1 were used for this experiment.
これら2つの文の意味は全く変わりません。上の文には関係代名詞が使われていません。その代わり、動詞 synthesizeが過去分詞として前の名詞 samplesを修飾しているのです。
 
では次の二つの文ではどうでしょうか?
The boy singing a song now is my brother.
The boy who is singing a song now is my brother.
これら2つの文の意味も全く同じです。上の文では関係代名詞を使う代わりに、動詞 sing を現在分詞のsingingとして前の名詞 boyを修飾しているのです。
 
確認問題をやってみましょう。
 
We need a green plant (produce) oxygen.
 
この文では私たちは緑の植物が必要である。それはどんな植物かというと、酸素を生成している植物、ということなので、We need a green plant which is producing oxygen. となり、which is を省略すると
We need a green plant producing oxygen. となります。
 
We need oxygen (produce) by a green plant.
 
この文では私たちは酸素が必要である。それは緑の植物によって作られている、ということなので、 We need oxygen which is produced by a green plant.となり、which is を省略すると、
We need oxygen produced by a green plant.となります。
 
次は練習問題です。( )の中の動詞を適切な形に変えてください。
 
You are not the only person  (study)  scientific English.
まず あなた一人が科学英語を勉強しているのではない、という文ですが、ここは person が科学英語を勉強するという能動文の主語になっているので、who is studying scientific Englishとなり、study は現在分詞形のstudying になります。
 
The solvent  (use)  for this experiment was methanol.
この文の意味はこの実験のために使用した溶媒はメタノールであった、ということですから、solvent which was used となり、use は過去分詞形のusedとなるのですね。
 
次は少し難しい例です、じっくり見ていきましょう。
 
When acid A reacted with base B, salt C and water resulted.
The  (result)   salt was then filtered.
 
酸Aが塩基Bと反応し、塩Cと水が生じた。この生じた塩を次にろかした。という意味ですが、 resultは ing形にするべきでしょうか?それともed形にするべきでしょうか? Salt C was resulting. という文は正しい文ですが、Salt C was resulted.という文は間違っています。なぜならresultは自動詞なので、受け身にはできないからです。
したがって、ここは The resulting salt was then filtered.となります。
 
まとめましょう。科学英語の特徴の一つに、動詞が形容詞となって名詞を修飾する。それによって文が簡潔になり、読みやすくなることが挙げられます。
 
現在分詞と過去分詞のどちらを使うかは、元になる文によって決まります。
元になる文が能動文のとき、主語を修飾するのは現在分詞
 
例)The precipitate which resulted
                                  → The resulting precipitate…
 
元になる文が受動文のとき、主語を修飾するのは過去分詞です。
 
例)The compound which was synthesized
                                   → The synthesized compound
 
皆さんも今後明瞭簡潔な文を書くのに、動詞の分詞形を是非活用してください。
 
いかがでしたか?ご感想やご質問は、コンタクトのページからお寄せください。
これでオンライン授業第5回を終わります。
 

 


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宮本惠子です。オンライン授業6回目のきょうは物質名詞や抽象名詞が普通名詞になるときについて解説します。
 
まずは物質名詞の場合について考えてみましょう。
お茶に入れる砂糖(sugar) は日常生活では物質名詞として使われています.
ですから、「私はお茶に砂糖を入れる」は
 
I put sugar in my tea. となり、sugarには不定冠詞の a はつきません。
 
日常生活で使われている sugar、お砂糖、は1つ、2つと数えることのできない物質名詞なので、その量を表すときには、体積を単位として使って、a spoonful of sugar (体積)とするか、重さを単位とした 5 g of sugar (重さ)などとしなくてはなりません。
 
 
一方、科学英語では sugarは砂糖ではなく糖(saccharide)の意味で使われ,その場合は普通名詞になるのです.一つ、二つと数えられる普通名詞ですから、1つの場合はa sugar,複数の場合はsugarsになります.
 
例えば,「ブドウ糖や果糖,ガラクトースは単糖である」は
「Glucose, fructose and galactose are simple sugars.」 です.
ここでsimple sugarとは単糖ということ。monosaccharideと同じ意味です。
 
 
次は抽象名詞の場合について考えてみましょう。
温度や圧力などの抽象名詞には不定冠詞はつきません。
例えば、A thermodynamic diagram with temperature as abscissa and pressure as ordinate. という名詞句は
「温度を横軸に、圧力を縦軸にとった熱力学線図」という意味ですが、ここでは temperatureもpressureもそれぞれ温度と圧力という抽象的な概念を表す抽象名詞なので無冠詞になっています。
 
ところで、「水は他の液体よりも高い温度で沸騰する」という文は
「Water boils at a higher temperature than other liquids.」となり、temperature には不定冠詞の a がついています。
 
それは、この文におけるtemperatureは温度という概念を表しているのではなく、「°C」と数値で表される温度を表しているからなのです。ある一つの数値で表される温度は a temperature となり、複数の数値で表される場合は temperatures となります。
 
次の例をご覧ください。
 
Some precipitates lose water readily in an oven at temperatures between 110℃ and 130℃. (沈殿の中には乾燥器中で110℃から130℃の間で簡単に脱水するものもある。)
 
この場合temperaturesは110℃から130℃の間にある複数の温度の値(例えば110℃, 111℃,112℃,113℃など)を指しているのです。
 
確認問題をやってみましょう。
 
Lead melts at (   ) temperature of 328℃.
鉛は328度で溶けるという意味のこの文で temperature は328度という一つの数字で表される温度。したがって空欄には a が入ります。
 
I sprinkled (     ) salt on salmon. という文(sprinkle はパラパラと振りかけるという意味の動詞)は「私は鮭に塩を振りかけた。」という意味です。
お塩という意味の salt には「a」はつきませんから、空欄には何も入りません。
 
(     ) acid reacts with (     ) base to produce (      ) salt and water という文は、酸と塩基が反応し、塩と水が生じるということなので、3つの(  )にはそれぞれ an a aが入ります。
 
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宮本惠子です。オンライン授業7回目のきょうは複合名詞について解説します。
 
科学英語の特徴はClear Correct and Concise。つまり、明瞭で、正確で、簡潔であることです。
 
簡潔に表現する手段の一つが複合名詞、英語ではNoun Compoundsといいます。
 
Noun Compoundsとはその名の通り、名詞(noun)が組み合わさった複合語(compound)。名詞をいくつか並べて作る新しい名詞のことです。
 
では、実際にNoun Compoundsの例をみてみましょう。
 
ここでは、scienceという名詞を含むNoun Compoundsの例をあげました。
 
science に activity を加えて、science activity これは、科学活動ということ。この日本語も複合名詞です。
 
analysis を加えたscience analysis は科学解析、boomが加わると、  科学ブーム
一方 scienceが後ろにくると、behavior science  行動科学、cell science、 細胞科学、disaster science、災害科学 などの言葉が生まれます。
 
このほかにも3つ以上の名詞を並べてできている複合名詞もたくさんあります。
 
例えば、heat (熱)とresistance(耐性)を組み合わせた heat resistance(耐熱性)という複合名詞にさらに glassを加えると、耐熱ガラス、wholesale suppliersを加えると耐熱ガラス卸売業者、というように、複合名詞はさらに名詞を加えることによって、どんどん長くすることもできるのです。
 
さて、複合名詞は何の役に立つのか?というと、科学英語を書くときにとくに役立ちます。
 
簡単な実験レポートから、高度に専門的な学術論文まで、英文を正しく書こうとすると、悩ましいのが冠詞や前置詞です。
 
例えば「溶媒を蒸留するための装置」では、溶媒のsolventは単数にするのか複数にするのか、蒸留というdistillationに the は必要か、装置のequipmentにはどのような冠詞をつければよいのか?
 
また、これらの名詞をつなぐために必要な前置詞は何か?
 
などと悩みどころが満載で、「equipment for the distillation of a solvent」という名詞句を自信をもって作るのは大変です。
 
ところで、先ほどの名詞句は、Noun Compoundsを使うと、solvent distillation equipmentとたった3語で表現できるのです。その上、こちらの表現の方が、簡潔なため、むしろ論文などでは好まれます。
 
さて、名詞句から複合名詞を作るのは簡単です。
 
まず冠詞をすべて取り除きます。それから前置詞も取り除きます。
 
残りの名詞のうち名詞句の頭にある名詞を一番後ろに持ってきます。ちなみにこの名詞は名詞句の頭(head)にあるのでhead nounと呼ばれています。
 
次にもとの名詞句でhead nounの近くにあった名詞はそのままhead nounの近くへ、遠くにあった名詞を先頭に持ってきて、複合名詞の出来上がりです。
 
ところで、英語と日本語の大きな違いの一つに言葉の並ぶ順番が違うということがあげられます。
 
I like scientific English.と私は科学英語が好きです。という2つの文を比較すると、文の頭に主語があることは共通ですが、英語では次に動詞、最後に目的語が来るのに対して、日本語では目的語のあとに動詞が続きます。ですから、英文を日本語に訳す時には後ろから前に遡って訳すことが多いのです。
 
しかし、複合名詞の場合、英語と日本語の語順は一緒になります。
これは日本人の私たちにとってありがたい特徴ですね。
 
それでは、ここで確認問題をやってみましょう。
 
次に示す名詞句から複合名詞を作って下さい。
その際、もとの名詞句のhead nounの冠詞はそのまま残すことに注意してください。
 
最初のan analysis carried out using X-rayについて、まずhead nounについている冠詞はそのまま残します。次にhead nownを後ろに移動します。不要なものは省き、重要な名詞X-rayをhead nounの前に持ってきて、an X-ray analysis(X線解析)という複合名詞の出来上がり。
 
次のa wire made of copperも同様に移動させ、a copper wire(銅線)となります。
 
最後のthe consumption of fossil fuelsでは、fossil fuelsが複数であることに注意しましょう。複合名詞になるとhead noun以外の名詞はすべて形容詞の役割を持つため、複数形は単数形に変化します。そこで the fossil fuel consumption(化石燃料消費量)となります。
 
いかがでしたか?ご感想やご質問は、コンタクトのページからお寄せください。
 


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宮本惠子です。オンライン授業8回目のきょうは複合形容詞について解説します。
 
複合形容詞とは一言で言うと、2つ以上の名詞や形容詞がハイフンで結ばれてできあがった新しい形容詞のことです。
 
定性的な表現よりも定量的な表現が好まれる科学英語では大変活用されています。
 
たとえば、日常生活ではよく使われる「膨大な量の文書(a huge document)」。
 
このhugeというのは定性的な表現で、具体的に何ページなのかわかりません。
定量的に500ページの文書と表現する方が好ましいのです。
 
そのほかにも、例えば「pain which is induced by heat」と6語で表現される「熱により誘発される痛み」は、複合形容詞を使うと「heat-induced pain」とわずか3語で表現することができます。
 
Clear Correct Conciseをモットーとする科学英語では同じ内容を伝えることができるなら、語数は少ないほど良いのです。
 
それでは、複合形容詞の作り方をみてみましょう。
 
最初の例 abilities for producing capsaicinでは abilitiesという名詞を for producing capsaicin(カプサイシンを産生するための)という形容詞句が修飾しています。
 
まず前置詞のforを削除します。次に名詞abilitiesを後ろに移動。producingは名詞の前に、そしてproducingの目的語になっているcapsaicinが producingの前に来て、それらをハイフンで結びます。
 
capsaicin-producingという複合形容詞ができあがりました。
 
次の例はdiamond which is created in laboratory(実験室で作られたダイアモンド)つまり合成ダイアモンドです。
 
ここでも同様に前置詞を削除し、diamondを後ろに移動して、createdが名詞の前に来ます。
 
最後にcreatedを説明している(どこで作られているか?)laboratoryをcreatedの前にもってきて、その二つをハイフンで結んでできた、laboratory-createdというのが複合形容詞になります。
 
さて、複合形容詞を作るときに一つ注意する点は、複数名詞が単数名詞になる、ということ。
 
遺伝子を編集するという意味の形容詞句 for editing genesを複合形容詞にすると、名詞toolが後ろへ、editingがその前に、editの目的語 genesがeditの前に来ますが、このとき複数形の genes は単数形のgeneとなり、最終的に a gene-editing toolという複合形容詞+名詞の組み合わせができます。
 
ここで、なぜ複数形のgenesが単数形に変わるかというと、このgeneはもとは名詞でしたが、複合形容詞の中では形容詞として働いているからなのです。
 
さて、英語と日本語の大きな違いの一つに言葉の並ぶ順番が違うということがあげられます。
 
I like scientific English.と私は科学英語が好きです。という2つの文を比較すると、文の頭に主語があることは共通ですが、英語では次に動詞、最後に目的語が来るのに対して、日本語では目的語のあとに動詞が続きます。
 
ですから、英文を日本語に訳す時には後ろから前に遡って訳すことが多いのです。
 
ところで、複合形容詞の場合、英語と日本語の語順は一緒になります。
オンライン授業第7回で説明した複合名詞の場合と同じですが、日本人の私たちにとってありがたい特徴ですね。
 
それでは、ここで確認問題をやってみましょう。
 
次に示す名詞句を複合形容詞と名詞の組み合わせに変えましょう。
 
その際、動詞はそのままでは複合形容詞にはならないので、現在分詞、または過去分詞の形に直して形容詞に変えることが必要です。
 
(動詞から作る形容詞については、オンライン授業第5回で詳しく解説しています。)
 
それでは、始めましょう。最初のa necklace which is plated with goldでは、まずnecklaceを後ろに移動しplatedをその前に、何でメッキしているのかを説明している、goldをさらに前において、金メッキのネックレスという意味のa gold-plated necklaceのできあがり。
 
次の文「water which contains hydrogen」は、waterを後ろに、動詞containをその前に持ってきますが、これは現在分子形のcontainingに直す必要があります。
 
目的語のhydrogenをその前に移動して、hydrogen-containing water 水素含有水ができました。
 
いかがでしたか?ご感想やご質問は、コンタクトのページからお寄せください。
これでオンライン授業第8回を終わります。